OSTEOPOROSIS
骨粗鬆症とは
加齢などによって骨がスカスカになりもろくなってしまう疾患を骨粗鬆症といいます。 骨粗鬆症をそのままにしていると、転倒などわずかな衝撃で骨折をしてしまうこともあ り、脊椎や大腿骨近位部(股関節の骨)の骨折は日常生活に支障をきたすだけでなく、寝たきりになってしまうこともあります。
また、気づかないうちに背骨の一部がつぶれてしまういつのまにか骨折(圧迫骨折)の危険性もあります。 60代女性の3割、70代女性の5割の方が骨粗鬆症です。 日本人の骨粗鬆症患者数は約1300万人、そのうち1100万人が未治療と言われています。
骨粗鬆症有病率の性・年代別分布
一般的に女性の病気と考えられていますが、男性も生活習慣病をお持ちの方は骨粗鬆症のリスクが高く考えられます。
骨密度と骨代謝
骨代謝とは
私たちの骨は皮膚などと同じように新陳代謝が繰り返されています。「破骨細胞」によって骨が壊され(骨吸収)、「骨芽細胞」によって骨が作られます(骨形成)。
健康な方は骨が壊されたらその分だけ骨が作られ、バランスよく骨代謝が行われます。しかし骨粗鬆症の方はこの骨代謝のバランスが崩れてしまい、骨を壊す量が作られる量より多くなって骨がスカスカになってしまいます。
原因
骨粗鬆症、骨代謝のバランスが崩れてしまう原因は多くのことが考えられます。
01.加齢
加齢による体の変化は以下のものがあります。
- ・女性ホルモンの分泌量の減少腸管でのカルシウムの吸収が悪くなる
- ・カルシウムの吸収を助けるビタミンDを作る働きが弱くなる
- ・若い時より食事量、運動量の低下
これらの変化によって骨の代謝のバランスが悪くなり、スカスカになってしまいます。
02.閉経
女性ホルモンの一つのエストロゲンは骨を壊す働きや、骨からカルシウムが溶け出すことを抑えています。閉経によって女性ホルモンの分泌が低下すると骨密度が急激に低下します。
女性の骨密度の変化
03.生活習慣
無理なダイエットによる栄養不足も骨粗鬆症の原因になります。成長期は骨にカルシウムを貯蓄する時期なので、将来的な骨密度の低下につながります。また、骨に負荷がかかることで骨を作る細胞が活発になります。そのため運動不足の方も骨が衰えやすくなります。他にも飲酒や喫煙も骨粗鬆症のリスクが高くなります。
04.病気や薬
特定の病気や内服薬によって骨粗鬆症のリスクが高まることがあります。
- 関節リウマチ
- 副甲状腺機能亢進症
- 糖尿病
- 慢性腎臓病(CKD)
- 動脈硬化
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- ステロイド薬の長期間の使用
これらの病気はホルモンの不足や骨を作る細胞の異常を起こすもの、骨の質が変化させてしまうものがあります。
このほかにも様々なことが骨粗鬆症のリスクを高めています。
- 昔より背が低くなった
- 腰が痛い
- 骨折をしたことがある
- 背中が曲がってきた
- 膝が痛い
- 外出が少ない
- 姿勢が悪い
- 胃もたれがする
- お酒をよく飲む
- やせ型
- 胸やけがする
- タバコをよく吸う
症状
骨粗鬆症になっても、痛みはないのが普通です。そのため骨粗鬆症になっていても気づかずに症状が進行してしまいます。そして転倒などで骨折をした際にはじめて骨粗鬆症と診断されるケースが多いです。
骨粗鬆症の方が骨折を特にしやすい部位
- 手首(橈骨遠位端)
- 脚の付け根(大腿骨頸部骨折)
- 背骨(胸椎・腰椎圧迫骨折)
検査方法
骨密度検査の方法
01超音波検査(QUS法)
かかとや脛の骨に超音波をあてて骨密度を測定します。X線を使わないので、妊娠の可能性のある人も受けられる方法です。健康診断で行われることが多い検査です。
02MD法
手のレントゲン写真をアルミニウム板と同時に撮影して骨密度を測定します。短時間ですむ簡便な方法です。
03DXA法
種類の異なるエネルギーのX線を照射し、骨と軟部組織との吸収率の差により骨密度を測定します。他の方法より測定精度が高い方法です。健診施設などでは簡易的な手首での検査が多いです。腰椎と大腿近位部(股関節)の2か所で測定すると最も的確に全身の骨密度を反映することがわかっており、当院では2か所の測定を実施しています(骨粗鬆症ガイドライン2015:日本骨粗鬆症学会より)。
当院の骨粗鬆症検査の特徴
当院で使用している骨密度検査装置(HOLOGIC製 Horizon Ci)はDXA法にて腰椎と股関節の2か所を測定しています。
検査時間は10~15分程度(解析等を含む)で、検査台に寝ているだけで検査が可能です。使用する放射線量は極めて少なくなっています。骨密度の検査結果は、右図のように報告されます。
大切な数字は、若い人と比較した数字であるYAM値(Young Adult Mean 若年成人平均値)です。
20~44歳の健康な方の骨密度を100%として、現在の骨密度が何%あるかを比較した数値です。この数値が、70%未満の方は骨粗鬆症と診断され、治療が必要な状態です。70%~80%の方でも、糖尿病、腎臓病、関節リウマチなどを合併されている方は骨粗鬆症と診断される場合もあります。また、胸椎、腰椎のレントゲンを撮影していつのまにか骨折(椎体圧迫骨折)の確認を行っています。通常、レントゲン写真での脊椎は横から見ると長方形に近い形です。しかし圧迫骨折の場合は椎体がつぶれて楔状になってしまいます。
圧迫骨折は強い腰の痛みを引き起こします。また、つぶれた椎体をかばうために腰が曲がり、別の椎体にも負荷がかかり、圧迫骨折を繰り返してしまうことがあります。圧迫骨折の経験がある方、腰に痛みがある方、背中が曲がってきたと感じる方は定期的な骨密度検査とレントゲン検査をお勧めします。
圧迫骨折の種類
胸椎7番に顕著な圧迫骨折が認められます。また、胸椎3番、4番、6番に軽度の椎体変性が見られます。
胸椎12番、腰椎1番、2番、4番、5番に顕著な圧迫骨折が認められます。腰椎3番にも軽度な椎体変性が見られます。
採血・骨代謝マーカー
当院では骨密度検査のほかに骨代謝の検査を行っています。血液中の骨代謝に関わる物質(骨代謝マーカー)を測定します。
骨代謝マーカーの目的
- 骨密度の低下を予測する
- 適切な治療薬を選ぶことができる
- 治療の経過を観察する
骨代謝マーカーの種類
- 骨形成マーカー…骨芽細胞が作り出す物質(OC、BAP、P1NPなど)
- 骨吸収マーカー…破骨細胞が作り出す物質、骨を壊したときに生じる物質(NTX、TRACP-5bなど)
- 骨質マーカー…骨の質に影響する物質(ucOCなど)
骨代謝マーカー以外にもビタミンDの値なども測定しています。
検査費用
4,500円
保険診療1割負担では、450円 保険診療3割負担では、1,350円
(その他、診察料などの費用がかかります)
治療・予防
1食事
骨の形成に役立つ栄養素を積極的に取りましょう。
カルシウム
骨や歯の主要な構成要素
細胞の分裂・分化、筋肉収縮、神経興奮の抑制、血液凝固作用の促進
(例:牛乳、乳製品、小魚、小松菜、チンゲン菜、大豆製品など)
ビタミンD
正常な骨格と歯の発育促進
小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進
血中カルシウム濃度を一定にし、神経伝達や筋肉の収縮を正常化
(例:サケ、ウナギ、サンマ、カレイ、椎茸、きくらげ、たまごなど)
ビタミンK
骨のたんぱく質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す血液の凝固作用、動脈の石灰化の抑制
(例:納豆、ほうれん草、小松菜、ニラ、ブロッコリー、キャベツなど)
また、高齢になると少食になりたんぱく質の摂取量が減ってしまう傾向があります。たんぱく質の摂取量の不足は骨密度の減少を助長するので、意識的に摂取しましょう。
2運動
骨は負荷がかかるほど骨を作る細胞が活発になります。散歩や階段の昇り降りを増やすなど日常生活での運動量を増やしましょう。ジョギングやエアロビクスなど有効な運動もありますが、ご自身の体の状態に合わせて無理なく運動を続けることが大切です。
3くすり
骨粗鬆症の治療に使う薬は大きく分けて3種類あります。
- 骨が壊されるのを防ぐ薬
- 骨が作られるのを促す薬
- 骨に足りない栄養を補う薬
01.骨が作られるのを促す薬
副甲状腺ホルモン薬 | 骨芽細胞に働き、骨形成を促す | 自己注射 | 1日1回 ・週に2回 | 自己注射 |
---|---|---|---|---|
注射 | 週に1回 | 来院して注射 |
02.骨が壊されるのを防ぐ薬
ビスホスホネート | 破骨細胞に働きかけ、過剰な骨吸収を抑えます | 注射 | 月に1度 | - |
---|---|---|---|---|
錠剤 | 1日1錠・週に1錠・月に1錠 | 起床空腹時に水で服用 逆流性食道炎の方はNG | ||
・女性ホルモン製剤 (エストロゲン) ・SERM | 女性ホルモンの減少による閉経前後の方の骨粗鬆症に有効 | 錠剤 | 1日1錠 | 乳がんの既往のある方はNG |
デノスマブ (抗RANKL抗体薬) | 破骨細胞に働き、骨密度を高めて骨折を防ぐ | 注射 | 半年に一度 | 低カルシウム血症の方は注意 |
03.骨に足りない栄養を補う薬
カルシウム薬 | 骨に吸収されるカルシウムを補います | 錠剤 | 1日1~2回 | 高カルシウム血症の方はNG |
---|---|---|---|---|
活性型ビタミンD3薬 | 腸でのカルシウムの吸収を助け、骨質を向上させる | 錠剤 | 1日1回 ・1日2回 | 高カルシウム血症の方はNG、腎機能に注意が必要 |
ビタミンK2薬 | カルシウムを骨に沈着させる | 錠剤 | 1日1回 ・1日2回 | - |
当院ではこれらの薬剤を患者様に合わせて処方しています。また、ビタミン剤など市販のサプリメントには注意が必要です。処方薬との組み合わせが合わないサプリメントもあるため、医師と相談して適切な治療を行うようにしましょう。